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ヘア&メイクアップアーティスト 三橋ただしさん

BEAUTY BIBBLE

今回は、ファッション雑誌やCF、また政治家のイメージコンセプトなどを手がける美のカリスマ、人気ヘアメイクアップアーティストの三橋ただしさんです。

メイクは自分の人生観、設計図と深く関わっている

The Day Spa (以下TDS):三橋先生は、「乙女心を持つ紳士」の異名を持ち、女性以上に女性の心を理解出来る美のカリスマ。また、その独特の美的感覚と歯に衣着せぬ発言で多くの女性たちから支持を得ていらっしゃいますよね。まずはプロのヘアメイクアップアーティストの視点から、ごく一般の女性がメイクをすることに対して何かアドバイスがあれば教えて頂きたいのですが・・・。

三橋さん(以下敬称略):お化粧することは、女性だけが楽しめる特権ですよね。そして何より素晴らしいのは、メイクによってある程度「なりたい自分になれる」ということです。例えば幼い顔の人でも強い女性を目指すなら、目尻をあげて、シャープなメイクにすれば、ある程度自分が望む女性に近づくことが出来ます。だから、本来は「どんな女性になりたいのか」「どんな人生を歩みたいのか」、という明確な自分の人生観、設計図を持つことが、メイクをする上で大切ではないかと思います。でもなかなかそんな風に意識をきちんと持ちながら、メイクしている人は少ないと思います。

TDS:確かに、普段はあまり深く考えず、毎日時間に追われながら、ささーっとメイクしている人がほとんどだと思います。とりあえず清潔感があって、人に不快感を与えないメイクをしていればOKかな?という感じでしょうか。

三橋:それはメイクダウンになっていることもあるかも知れませんね(笑)。これは僕の持論なのですが、メイクアップの「Make」は、人格の「格」。そして、その格を上げる、つまりUPさせるということで、「Make Up」と言うのだと解釈しています。それはメイクをする僕達プロにとっても同じで、メイクアップアーティストでいちばん大事なことは、自分の格を上げること。例えば、僕がある女優さんのメイクをするとすれば、その女優さんの顔に、僕の人格がそのままのってしまうわけですね。だから常に、自分の格を上げなければいけないと努力してきました。それは感性を磨く、つまりメイクのテクニックを勉強するだけではなく、音楽や絵画、アートの世界をはじめ、広い意味で教養を身につけることが大切だと思っています。
でも、普通の女性がメイクをする上で、そこまで真摯に自分と向きあうのは、なかなか難しいですよね。まず朝顔を洗う時、茶碗を洗うように、自分の顔をぞんざいに洗ってないか、気をつけてみましょう。洗顔からきちんと、意識を持って丁寧にしてみてください。

TDS:先生は女性政治家のキャンペーンポスターなども手がけていらっしゃいますが、やはりファッション雑誌や広告、コレクションなどのヘアメイクアップと違って、そのアプローチはかなり違うものでしょうか?

三橋:政治家の場合は、まずある程度その方の政策に応じて、イメージコンセプトを作ることから始めます。例えば、庶民的に見えるようにするのか?これまでのイメージを覆らせるようなイメージにするのか?どう売り込むか?で、メイクは全く違ってきます。でも、これまで女性政治家や一流の女優さんのお肌を触って、つくづく感じていることは、みなさん、お肌が驚くほど強いということですね。某女性政治家のお肌も触れれば弾き飛ばすような強いオーラがありました。それは少々のことでは傷つかない鎧でもあると思います。それが心の鎧にもなっているんですね。

TDS:なかなか深いお話ですね。先生ご自身の身だしなみやお洒落について、何かこだわっていらっしゃることがあればぜひ教えてください。

三橋:僕は男のファッションは、3つの「元」で決まってくると思うのです。
その3つとは、「首元」「袖元」「足元」。この3つの元をすべて締めれば、きちんとした印象になりますし、どこかひとつゆるめると、カジュアルになりますね。自分のファッションに関しては、ジャストサイズの服で品よくがモットーです。でも、かなり保守的です。白、ブルー以外の服は着ませんし、シャツはもう長年、ずっと同じイタリアの専門店で作っています。靴も同じブランドでイギリス製ですね。洋服はちょっとセクシーにイタリア製で、足元は保守的にイギリス的にしめる、という感じでしょうか?

TDS:そんな三橋先生が最近、夢中になっていることは何かありますか?

三橋:最近声楽をはじめたのですが、すっかりその魅力にハマってしまいました。
もともとクラシックが大好きで、オペラを聴くために海外旅行にもよく行ってましたし、ピアノも弾いていたのですが、歌を歌うことは思いつかなかったんですね。歌を知らないハゲタカ(笑)。でも歌枕直美さんという素晴らしい声楽家と出逢って、彼女のレッスンに通っています。声楽って本当に面白いんですよ。声がこもったり、響かないときは、自分自身に嘘をついているんです。本音、本能を出しきらないとだめなんですね。生まれてはじめて声楽のレッスンをしたとき、体の循環がとても良くなった気がしました。のどを開くことが心を開くことに通じるというのも、おもしろい発見でした。そしてピアノと違って、声楽は人に聴いてもらうことで急激に成長していくものなんですね。声楽に出会って、とても元気になれたと思っています。

TDS:ところで先生はスパがもたらせる力についてどう思われますか?

三橋:バリ島でのボディトリートメントが印象に残っていますが、日本でもよくトリートメントに行きますね。僕はメールでもパソコンではなく、たとえば携帯メールで1000文字ぐらい打つことも多いんですが、もう、首、方の凝りが凄いんです。それがある程度、限度を超えると心が一気にネガティブになるんです。そうなると、目覚めた瞬間がとにかく最悪。筋肉の凝りが心にも波及しているんですね。そんなとき必ずボディマッサージをしにいきます。すると、まず心がほぐされて、柔らかくなる。そして筋肉も柔らかくなって、一気にリカバリー出来るんです。僕にとってスパのトリートメントは、人生の上で欠かせないものですね。自分へのメンテナンスでもあると思っています。
心がほぐされるということは、心が豊かになることでもあると思うんです。
スパのトリートメントはラグジュアリーな環境で、癒される香り共に、心を豊かにしてくれる場所だと思います。

TDS:癒されること=心が豊かになるということでもありますよね。

三橋:いちばん最初の話「人格」の話にもどりますが、僕は人格の高い人、というのは結局のところ、豊かな人だと思っています。もちろん、ご自身がいろんな経験をして教養もおありでということも大切ですが、その豊かさをきちんと人に与えることの出来る人。そういう人の肌はその豊かさが、美しいオーラとなって出ていると思います。またどれだけ人より楽しい事を知っているか、どれだけ悲しみを知っているか、つらさを知っているかも、豊かさのバロメータのひとつだと思います。僕はそんなさまざまな気持ちが入り混じることを、「心のグラデーション」と言ってるんですが、人生の色もただきれいなだけじゃなくて、真っ白から真っ黒までいかにバリエーションあるカラーを持っているかが、人生の豊かさ、心の豊かさにつながると思います。

TDS:今日は素敵なお話ありがとうございました。

三橋ただしさん プロフィール
ファッション関係の雑誌・TV・CF・ポスターなどを中心に幅広いメディアで活躍。政治家のイメージポスターなども手がける。特にナチュラルメイクによる肌の質感を出すテクニックには定評があり、業界内外から支持を得ている。その理念から化粧品会社の企画・商品開発・プロデュースなども手がける。絵画、音楽、舞踊と幅広い世界で精通。
■ただし事務所 http://www.tadashi.gr.jp/index.html
■ブログ「エレガンスの伝道師」 http://www.venus-beans.com/v-log/log/beautiful/